説教『アレオパゴス』牧師 若月健悟

最終更新: 2日前

2021年6月6日(日)聖霊降臨節第3主日礼拝説教要旨

《聖書》使徒言行録17章22~34節

【はじめに】

 パウロ先生は、生涯3回にわたる伝道旅行をしまして、第2回目のギリシア伝道旅行で、アレオパゴスへと向かうことになりました。

 アレオパゴスは、ギリシアの都市国家アテネの中心にありますアクロポリスの西側にあり、標高115メートルの小高い岩山の頂上のことです。幅1メートル、20段の石段を上って行きます。それほど広くはありません。

アレオパゴスは、略称で「アレイオス・パゴス」のことです。つまり軍神として信奉された「アレスの丘」という意味です。さらに、アレオパゴスは「アレオパゴス評議所」を略した呼び方で、使徒言行録は当時知られていた略称を用いています。

 アレオパゴスは、アテネでは最も古い会議の場所ですが、裁判が行われていました。パウロ先生が訪れた時には、教育の監督もなされていました。つまり、新たな哲学や宗教の教えをなすにふさわしい人物であるのかどうか、身分審査が行われたのです。

 パウロ先生の身分審査がなされた理由は、使徒言行録17章18節に告げられています。

 「パウロが、イエスと復活について福音を告げ知らせていたからである。」

 パウロ先生は、見晴らしの良い小高い岩山の頂上にあるアレオパゴスで、評議員から尋問を受けたのです。

【弁明】

 アレオパゴスには、2つの石台があったと伝えられています。最初の裁判が行われていたことの証しとなっています。1つは「悪行の石」と呼ばれ、もう1つは「非情の石」と呼ばれました。原告と被告が、どちらかの石に立つのです。ですが、パウロ先生がどちらの石に立ったのかは分かりません。パウロ先生は、古くから行われていた裁判に従って、裁判人である評議員から厳しい尋問を受けたのです。

 パウロ先生は、アテネの町に入りますと、あちらこちらに立っている祭壇に気づくのです(23節)。祭壇は、日本で言えば、小さな祠(ほこら)といったものです。アテネの祭壇は、大理石でできていまして、このように刻まれていました。

 「知られざる神に」

 「知られざる神に」と刻まれた祭壇には、その続きがあるのです。その続きは、祭壇を奉献した人の名が刻まれていたことです。あちらこちらに祭壇が見かけられたのは、個人が奉献したためです。そのため、街中の通りの目につく場所に祭壇が立ち、その数は相当なものとなったことが分かります。

 それでパウロ先生は、最初にこのように告げることになったのです。

 「アテネの皆さん、あらゆる点においてあなたがたが信仰のあつい方であることを、わた

  しは認めます。」(22節)

 この御言葉には、皮肉が込められているようにも思えますが、そうではなく、その祭壇の多さからギリシア人の「信仰のあつさ」を素直に認めざるをえないという思いが込められているのです。

 このように、アテネの人々が、哲学に熱心であるだけではなく、信仰においても熱心であることを明らかにしたあとで、いよいよ本論に入るのです。

 なにゆえこのように祭壇が多くあり、「知られざる神に」と刻んでいるのか、その理由を明らかにするのです。

 「これは、人に神を求めさせるためであり、また、彼らが探し求めさえすれば、神を見い

  だすことができるようにということです。」(27節)

 真の神さまを信じるために、真の神さまは「悔い改めること」を求めておられる、と明言するのです(30節)。

【死者の復活】

 こうしてパウロ先生は、アレオパゴスへ行く前に、「イエスと復活」について福音を宣べ伝え、アレオパゴスではその真実が「死者の復活」として実現されたことを告げるのです。ですが、「イエスと復活」が「死者の復活」と告げられた瞬間に、裁判人である評議員は、パウロ先生の弁明に関心を失ってしまうのです。「死者の復活」はギリシア人の心をひくほど新鮮な驚きとして響かなかったのです。

 というのは、「イエスと復活」という言葉は、ギリシア人にとって、全く初めて聞く神々として理解されたのです。ギリシア語の名詞には、男性形、女性形があるため、「イエス」は男性名詞のため男性の神、「復活」は女性名詞のため女性の神と理解されたのです。つまり、夫婦の神であるとの理解です。言葉の真実を知るよりも、「イエスと復活」という夫婦の神がどうなるのか、とても興味を示したのです。

 ところが、話しが「死者の復活」ということになったため、1人の神の話しでは、ギリシアの神々にも同じ話しがあることから、急に熱が冷め、聞くに値しないということになったのです。

 「死者の復活ということを聞くと、ある者はあざ笑い、ある者は、『それについては、い

  ずれまた聞かせてもらうことにしよう』と言った。」(32節)

 裁判人である評議員は解散してしまったのです(33節)。

【福音の真理】

 パウロ先生のことを考えますと、どんなに失望したことかと思うのですが、実はそうではなかったのです。最初のアテネ伝道は、大切なギリシア伝道の成果を生み、新たな伝道の拠点を生み出したのです。

 パウロ先生だけがアレオパゴスに残されたと思っていましたら、何人かがパウロ先生の許にとどまっていました。その中に、アレオパゴスの評議員ディオニシオ、ダマリスという婦人がいたのです。パウロ先生は、ギリシア伝道への大きな手掛かりをつかんだのです(34節)。

 この伝道の成果を通して、わたしたちは、「イエスと復活」「死者の復活」に告げられた「福音の真理」に出会うのです。十字架の御子イエスさまを復活の主キリストと信じる福音の真理です。

 ギリシア人は真理を愛しましたが、その真理には3つの姿勢があるのです。

 ①ブルーノ的真理(人が命懸けで守り通さなければ真理でなくなるとする姿勢:主観的真

  理) 

 ②ガリレオ的真理(科学が真理を実証するとする姿勢:客観的真理) 

 ③福音の真理(神により実現された真理を人が宣べ伝えることにより信仰へと導く姿勢:

   信仰の真理)

 ブルーノとガリレオは16世紀中ごろに誕生し、同世代を生きたイタリア人です。ブルーノは修道士からカルヴァン派に改宗した哲学者です。聖書は、地球を中心に天が回っているという「天動説」の立場ですが、ブルーノは地球こそ太陽の周りを回っているという「地動説」を貫きました。そのため、宗教裁判で火あぶり刑に処せられました。

 ガリレオは、数学・物理学・天文学の学者として「地動説」を唱えましたが、2度の宗教裁判で「地動説」を撤回しました。裁判所を出る時、ガリレオは「それでも地球は回っている」とつぶやいたと伝えられています。2人の姿勢は全く正反対であるように思えます。

 わたしたちは、ブルーノやガリレオのようにではなく、父・子・聖霊なる神さまが、わたしたちの救いのために実現された御子イエスさまの十字架と復活の真実に依り頼む信仰に立っています。福音の真理が真実であることを証明する物理的な手立てを知りません。福音の真理が生きて働いている現実を証明する手立てもありません。御子イエスさまの十字架と復活こそわたしたちの罪の赦しと永遠の命の約束であると信じ、告白するのです。このように信じて生活し、生活の中から証しすることが福音の真理に生きる道です。

【アレオパゴスの真実】

 アレオパゴスは信仰の分岐点です。哲学の豊かな知識を持ち、物事の真実を見極めようとする多くの知恵ある人は、「イエスと復活」「死者の復活」という言葉の字面に気が取られて、その言葉の中に秘められた真実を聞き逃してしまいました。

 ですが、アレオパゴスの評議員ディオニシオとダマリスという婦人はその場に立ち止まり、少数でしたが、福音の真理に生きる信仰へと導かれました。福音の真理は、聖書にその名をとどめた人々の悔い改めと信仰によって、その真実が証しされたのです。罪に気づかせ、悔い改めへと導き、救いの喜びに心を満たすのは、福音の真理だけです。生きて働く真実は、必ず人の心の扉を内側から開けるのです。

 パウロ先生が証しした真実は、御子イエス・キリストの福音の真理です。それが生きて働いている証しは、人を罪の自覚、悔い改め、救いの喜びへと導くからです。アレオパゴスこそ、わたしたちクリスチャンが立つ信仰の分岐点です。覚えて歩みましょう。

1回の閲覧

最新記事

すべて表示

説教『教会の喜び』牧師 若月健悟

2021年6月13日(日)花の日・聖霊降臨節第4主日礼拝説教要旨 《聖書》フィリピの信徒への手紙2章12~18節 【はじめに】 先週水曜日に第1回目のワクチン接種を受けてまいりました。お休みの方が多く、順番は早く回ってきました。手続きを終え、接種する時になりまして、左腕を差し出しますと、看護師さんが質問しました。 〝アルコールめんは、いかがですか。〟 自信をもって即答しました。 〝しばらくお酒は控

今週の集会(2021年6月13日~)

こどもの教会 6月13日(日)10:30 主日礼拝の最初に献げます。 お話し 清野量神学生 奏楽  光岡節子姉 聖書  マタイによる福音書5章43~48節(お話し) さんびか こども11〝あかるいひかりを〟 こども125(讃美歌21-487)〝イエス、イエス〟 こどもプログラム ありません。 花の日・聖霊降臨節第4主日礼拝 6月13日(日)10:30 説 教 『教会の喜び』牧師 若月健悟 司

次週の集会(2021年6月20日~)

こどもの教会 6月20日(日)10:30 父の日・聖霊降臨第5主日礼拝の最初に献げます。 お話し 池田正幸兄 奏楽  光岡節子姉 聖書 マタイによる福音書7章1~5節 さんびか こども119〝しゅにしたがうことは〟 こども118(讃美歌21-544)〝イエスさまがきょうかいを〟 こどもプログラム ありません。 父の日・聖霊降臨節第5主日礼拝 6月20日(日)10:30 説教  『