説教『エフェソ伝道』牧師 若月健悟

2021年7月11日(日)聖霊降臨節第8主日礼拝説教要旨

《聖書》使徒言行録19章13~20節

【はじめに】

 パウロ先生のエフェソ伝道は、アジア州での伝道の終わりを告げるものでした。ユダヤ人もギリシア人も誰もが、主の御言葉に耳を傾けるようになった、と使徒言行録19章10節は告げるのです。

 その後、このような事件が起こるのです。使徒言行録19章13~20節です。「ユダヤ人の祈祷師たち」と小見出しが付いている通り、思いもかけない事件が生じたのです。

【ユダヤ人祈祷師のこと】

 パウロ先生が、いつの間にか、神さまのように仰がれるようになり、パウロ先生が身に着けているものに触れただけで、病が癒されたというのです。イエスさまの場合も、同じことが起こっています。長患いに苦しむ女性が群衆の中からイエスさまの衣に、そっと触れると、イエスさまから霊の力が流れ出て病が癒されたという物語です。パウロ先生時代には、このような病の癒しが盛んに行われていました。

 パウロ先生が身に付けているものに触れると、病が癒されるのを目撃していたユダヤ人の祈祷師たちがいました。その真似をするのです。この祈祷師たちは、14節によりますと「ユダヤ人の祭司長スケワ」という人物の息子たちです。どうも怪しげな祈祷師ですが、父親はエフェソの町の大祭司として、人々からは一目置かれる立派な人物であることに違いありません。その7人の息子たちが、信仰をはき違いしたようで、パウロ先生の真似をして、悪霊にとりつかれた男に向かって叫ぶのです。

 「パウロが宣べ伝えているイエスによって、お前たちに命じる」(13節)                   

 すると、悪霊にとりつかれた男は言い返します。

 「イエスのことは知っている。パウロのこともよく知っている。だが、いったいお前たち

  は何者だ。」(15節)

 悪霊にとりつかれた男は7人にとびかかると、さんざんな目に合わせ、7人は命からがら逃げ延びたのでした。その結果、この事件を通して、エフェソの町の人々は、いっそう「主イエスの名」を大いに崇めるようになったのです(17節)。

 物語はさらに続きます。信仰に入った人々は、「自分たちの悪行をはっきり告白した」(18節)のです。これは悔い改めの信仰を物語ります。その悔い改めを行動で現わす人も出て、魔術の書を「皆の前で焼き捨てた」(19節)のです。その値段も見積もってみると「銀貨五万枚」(19節)の価値があったのです。労働者1日の賃金が銀貨1デナリンと考えますと、5万デナリオン、つまり1人の賃金に換算しますと、約137年分に相当するのです。大変な価値のある悪魔の書物であることが分かります。羊皮紙かパピルスで作られた貴重な書物を惜しみなく焼いたというのは、イエスさまの御降誕の物語で惜しみなく献げる人々がいたことを思い起こさせます。東方からやってきた占星術の専門家たちは、赤ちゃんイエスさまに出会い、黄金、没薬、乳香を御前に献げました。最も高価なものを惜しみなく献げる思いが、信仰の証しとして輝いていることに気づかされるのです。それは、救い主の真実の名「イエス」に出会った、救いの喜びを感謝して証ししたことを物語るのです。

【イエスの御名】

 この背景を考えますと、旧約聖書の時代から、ただ御独りの主を神さまと信じる信仰は、偶像礼拝を禁じ、他の神々への信仰を禁じました。アブラハムに始まるただ御独りの主をわたしの神さまと信じる信仰は、確実に受け継がれていきました。モーセの時代には、主の御名が明かされました。

 「わたしはある。わたしはあるという者だ」(出エジプト記3章4節)

 神さまは、御自分の名、つまり正体を初めてモーセに明かされ、それを受け継いで来たのです。それを見えるしるしとして授けられたのが「モーセの十戒」です。神の像を造る代わりに、信仰と生活の規範となるべき指針を与えられたのです。「モーセの十戒」を安置するためにダビデによって計画された神殿建築を実現したのはその子ソロモンです。ソロモンは知っていました。いかなる立派な神殿も主なる神さまのお住まいとすることはできない、と告白するのです。それでも、なぜ神殿を建築するのか。その目的はただ1つです。「主であるわたしの名を置く」そのしるしである「モーセの十戒」を納めた契約の神の箱を安置するためです。

 神殿建築は、「モーセの十戒」を通して主なる神さま御自身の御名を置き、礼拝を献げる場所なのです。ソロモンの時代は、神殿建築の完成が、国民の心の唯一の拠り所となり、王宮建築の完成と共に、誕生して間もない国の2本の柱が見える形で完結したのです。

 「名を置く」とは、長い旧約聖書の時代を通して継承されてきた信仰の証しです。それを実現したのが、神の御子イエスさま御自身なのです。

 イエスさまの時代には、第2神殿が再建されていましたが、「名を置く」その根拠である「モーセの十戒」は失われていました。それで、ただ建物だけの神殿には何の意味もないのかと言いますと、そうではないのです。神殿に、古くて新しい意味を与えられたのがイエスさまです。イエスさまは「父の家」と呼ばれ、「祈りの家」として回復することを願われて、神殿の中庭から商売人を追い出されたのです。神の御子イエスさまにとって、神殿はいつでもそこに帰ると、主なる神さまにお会いできる「心の家」なのです。

 こうして、「イエスの御名」の信仰はそのお弟子さんたちに継承されたのです。ユダヤ人へ宣べ伝えるのはペトロさんを初め、イエスさまの最初のお弟子さんたちです。アジア州を初めギリシアやローマの世界への伝道を担ったのが、パウロ先生です。

 パウロ先生が受け継いだのは、「イエスの御名」だけだったのです。病を癒す奇跡はパウロ先生の伝道の目的ではなかったのです。

【主の御言葉】

 では、パウロ先生が「イエスの御名」に込められた思いはどのようなことなのでしょうか。それは、「主の御言葉」を宣べ伝えるこ

とです(20節)。「主の御言葉」は、イエスさま御自身の御言葉です。その御言葉は、イエスさまを神の御子キリストと宣べ伝えることを通して真実となるのです。

 イエスさまの十字架は人の罪を贖い赦し、キリストの復活は永遠の命を約束し、ついには、天の御国へと招いてくださるのです。この一貫してぶれることのない、イエスさまの十字架と復活の真実こそ、わたしたちのただひとつの永遠の救いがかかっているのです。

パウロ先生は、若い日に十字架と復活の主イエスさまに出会って、心の目が開かれ、回心してクリスチャンになりました。この救いの喜びを、パウロ先生は、心を尽くし、思いを尽くし、力を尽くして世界中の人々にひたすら宣べ伝えるのです。その途上で起こる奇跡は、パウロ先生にとって、最大の目的ではないのです。癒しの奇跡は一時です。信仰は永遠の救いであり、命なのです。

 主イエスさまの御言葉が、真実、人を救い、天の御国へと招かれるのです。信仰は、それを言葉で告白することになるのです。その御言葉にクリスチャンは、寄り頼むのです。

 主の御言葉は、いつもわたしたちと共に在り、わたしたちを導く道の光なのです(詩編119編105節)。

【エフェソ伝道再び】

 パウロ先生のエフェソ伝道では、多くの実りを与えられました。特に、弟子の1人であるテモテの存在です。テモテは、小アジアのリストラの出身で、父はギリシア人、母はユダヤ人です。パウロ先生から聖霊による洗礼を受け、いつもパウロ先生の伝道に同行する、誠実な若者でした。テモテの信仰は、祖母と母から受け継いだ信仰の篤さにあります。テモテの存在は、パウロ先生の思いを良く理解し、委ねられた働きを確実になし遂げることにあります。パウロ先生の書いた、コリントの信徒への手紙一 16章10~11節によりますと、テモテは内気な性格であったようです。それだけに、パウロ先生の言葉には、深い信頼の思いと愛の気遣いがあったことを伺わせるのです。言い伝えによりますと、テモテは、エフェソ教会の監督となり、良く教会を導いたようです。その名が長く伝えられたことからも、それが伺えます。

 わたしたちもまた、主の御用のために伝道し、用いられる喜びに生かされて、信仰の力強さを証ししてまいりましょう。

 「主の言葉はますます勢いよく広まり、力を増していった。」

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