説教『パンの町ベツレヘム』牧師 若月健悟

2020年12月27日(日)歳末・降誕節第1主日礼拝説教要旨

《聖書》マタイによる福音書2章1~12節

【パンの町ベツレヘム】

イエスさまがお生れになったベツレヘムは、エルサレムから南へ7キロほど行った町です。ベツレヘムは「パンの家」という意味です。小麦とオリーブが豊かな町として知られていました。古い呼び方では「エフラタ」といいますが、「肥えた土地」を意味しています。

 「エフラタ」と「ベツレヘム」の2つの呼び方が一緒になっている預言書があります。ミカ書です。ミカ書5章1節は、王である救い主が誕生する町として預言するのです。

 「エフラタのベツレヘムよ

  お前はユダの氏族の中でいと小さな者。

  お前の中から、わたしのために

  イスラエルを治める者が出る。

  彼の出生は古く、永遠の昔にさかのぼる。」

 豊かなパンの家ベツレヘムは食べ物だけではなく、その町からダビデという王さまが誕生することも告げていたのです。ルツ記です。

ルツ記は、イスラエルに初めて王さまが誕生する壮大な物語、士師記とサムエル記の間にポツンと置かれた谷間の百合のような物語です。ルツ記の最後に「ダビデの系図」が記述され、ダビデ誕生の予告がなされます。この物語の舞台がベツレヘムなのです。

 エフラタとベツレヘムの2つの呼び名が示す、豊かなパンの家が、ダビデの末裔として誕生する神の御子イエスさまへと結び付く時、救いの物語の始まりとして、世界の人々の心を満たすパンの町ベツレヘムとなるのです。

【出会いと別れ】

 さて、マタイによる福音書2章冒頭の物語は、エルサレムからベツレヘムへと場所が移ります。ここに登場する人々を通して、出会いと別れが物語られるのです。

出会いは、東方からやってきた占星術の専門家たちと、エルサレムの支配者ヘロデ王のことです。エルサレムではあまり顧みられなかった占星術は、東方ではとても盛んに行われ、人や国の運命を占う大切な役割を担っていました。占星術の専門家たちは、古くから伝えられてきた、偉大な王さまの誕生を星の導きを頼りに、エルサレムの町へと導かれたのです。エルサレムを支配していたヘロデ王に面会し、イスラエルに伝えられた新たな王さまの誕生を伺うためでした。

 ヘロデ王自身も、占星術の専門家たちの話しに驚きを隠せませんでしたが、すぐにそれが、預言された新たな王さまの誕生であることを知ったのです。ヘロデ王に代わる新たな王さまの誕生は、王である自分を排除することを意味しましたから、すぐにその誕生の地を占星術の専門家たちに探らせるのです。

 出会いは、新たに誕生した王さまの抹殺を意味することになるのですが、占星術の専門家たちは、星の導きでヘロデ王との別れへと導かれることになるのです。ヘロデ王は、新たな王さまの誕生の知らせに心が煮えくり返るような激しい怒りを覚えました。それは、嫉妬心からです。ヘロデ王はユダヤの支配者として、人々を恐れさせました。ですが、その心の中には、神さまを信じることもなく、人を信頼することもない、孤独な支配者の激しい嫉妬心が渦巻いていたのです。

 ヘロデ王の心を考えていますと、ヘロデ王の心の中に自分の心が映し出されているように思えてくるのです。ヘロデ王は、東方の占星術の専門家たちが、新たな王さまの誕生に出会いながら、約束した報告をせずに、自分の国へと戻って行ったことを知りますと、すぐに行動に出るのです。それは、ベツレヘムに生まれた2歳以下の男の子を殺害せとの命令を下すことです。1人の王さまの嫉妬心が、赤ちゃん殺害へと向かうことになるとは、誰も思いつかないことでした。

 ですが、現実は厳しいものでした。ヘロデ王の心は、やがて、エルサレムの町の人々の心を映し出す、その始まりに過ぎなかったのです。人々は、声を1つにして、イエスさまを「十字架につけろ」と叫ぶことになるのです。普通の人たちが、救い主イエスさまを「十字架につけろ」と叫ぶのです。誰もが、〝ヘロデはひどい王だ〟と心に思うのですが、実は、ヘロデ王と同じ思いが、普通の人の心の中に根深く巣くっているのです。これがわたしたちの罪の現実です。

【本当の出会い】

 東方の占星術の専門家たちは、ヘロデ王の魂胆を知らず、新たに誕生した王さまに出会うために、星の導きのままにエルサレムから南の方へと旅立つのです。その行き着く町がベツレヘムです。

 ベツレヘムは、住民登録をするために訪れた人々でごった返していましたが、町の中の宿屋に隣接した家畜小屋へと導かれました。そこには、ヨセフとマリアが見守る飼い葉桶があり、その中に1人の赤ちゃんが寝かされていました。イエスさまです。

 占星術の専門家たちは、自ら信じる星の導きのままに、飼い葉桶の赤ちゃんを、新たに誕生した王さまと受け入れたのです。新たな王さまの誕生は、ユダヤの国の王さまを超えて全世界の王さまとして、神さまが与えてくださった救い主と受け止めたのです。

 赤ちゃんイエスさまが全世界の王さまとなられることを自ら信じた証しは、持参した献げ物を通して明らかにされるのです。「黄金、乳香、没薬」の宝物です。

 この3つの宝物が、どうして王さまへの献げ物となったのかは、旧約聖書が明かにしています。

 黄金は、王さまにふさわしい奉献物と見なされたことです。列王記上10章2節や25節には、シェバの女王をはじめ諸国の王さまがソロモン王の知恵を受けるために、黄金を持参したことを物語っています。黄金は今も変わらぬ大切な宝物です。

 乳香は、出エジプト記30章34節以下で、「純粋な、聖なる香」として、没薬と共に、主なる神さまへの献げ物として用いられました。

 没薬はどうでしょうか。列王記上10章25節には、ソロモン王に奉献された宝物の中に「香料」がありますが、この香料が没薬のことです。没薬は、王さまが好む香り高い香料というだけではなく、大祭司を清める聖なる油であることが、出エジプト記30章23~33節に詳しく規定されています。王さまも、キリストの意味を持つ「油注がれた者」であることから、大祭司も王さまも、没薬という奉献物を受け取ったと理解できるのです。

 これらのことから、黄金、乳香、没薬は、王さまへの奉献物としてもっともふさわしい献げ物であることが分かるのです。

 占星術の専門家たちは、持参した、黄金、乳香、没薬を飼い葉桶の赤ちゃんイエスさまに献げることを通して、新たな王さまの誕生を心から喜び祝ったのです。

 ですがもう一方で、乳香と没薬は、イエスさまの十字架の死と葬りに深く関わっていることを忘れてはなりません。マタイによる福音書26章6~13節では、マリアがイエスさまの御頭に香油を注ぎかけますと、イエスさまは「わたしを葬る準備をしてくれた」と告げるのです。十字架の上で最期を遂げられたイエスさまは、お墓に葬られますが、婦人たちやニコデモが御遺体に乳香や没薬を用いるために買い求め、お墓に持参したことを物語っているのです(マルコ福音書16章1節、ルカ福音書23章56節、ヨハネ福音書19章39節)。 

 王さまへの献げ物は、喜びのしるしであると同時に、葬りのしるしでもあるのです。乳香、没薬はそれを証しするのです。

 東方の占星術の専門家たちは、飼い葉桶の赤ちゃんイエスさまを新たな王、世界の救い主と信じました。持参した黄金、乳香、没薬は、精いっぱいの喜びと感謝のしるしとなりましでした。ですが、もう一方では、やがてやってくる葬りのしるしともなったのです。

【真のパンの町ベツレヘム】

 ベツレヘムは、住民登録をする人々でごった返していましたが、その喧騒の中に、救いの光が輝き始めたのです。神の御子イエスさまの誕生は、心飢え渇く全世界の人々に大きな慰めをもたらすのです。罪から救う真の希望の始まりとなるからです。ベツレヘムは、こうして小さなパンの家から全世界の救いのために光を放つ真のパンの町に変わるのです。

 わたしたちは、時として、自分の心の中に2つの異なった思いがぶつかり合うのを感じることがあります。ヘロデ王のような嫉妬深い心と占星術の専門家たちの純真な心です。2つの心が、時としてぶつかり合うのです。ヘロデ王の心をむき出しにして、相手を傷つけてしまい、〝本当はそうではなかったのに〟と、恥ずかしく、悔やむ思いに打ちひしがれることも起こるのです。

 大切なことは、そのことに気づいて悔い改めることです。飼い葉桶の赤ちゃんイエスさまの御前に、ヘロデ王のような心も、占星術の専門家たちの心も全て献げ尽くすことが大切です。クリスマスは、全ての人に救いをもたらす神の御子イエスさまの御誕生なのですから、今からパンの町ベツレヘムへと信仰の旅を始めましょう。

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