説教『主の祈りの今』牧師 若月健悟

2021年5月9日(日)母の日・復活節第6主日礼拝説教要旨

《聖書》マタイによる福音書6章5~15節

【はじめに】

 母の日のことを考えていまして、ふと、イエスさまの母マリアさんのことが思い浮かび、4つの福音書を読んでみました。

 マリアは天使ガブリエルの御言葉を受け入れ、神の御子キリスト・イエスを産みます。法的な父・育ての親として、ヨセフがマリアを支えます。赤ちゃんイエスが神の御子にしてダビデの家系に属する人となるためです。東方の占星術の学者たち、羊飼いたちが、赤ちゃんイエスこそ神の御子と告白します。生後8日目に受ける割礼のために、エルサレム神殿に詣でますと、預言者シメオン、女預言者アンナの証言により、神さまの救いの御計画を実現する人、と告げられます。

 イエスさま12歳のとき、エルサレム神殿で両親に告げた御言葉は「(エルサレム神殿こそ)わたしの父の家」との証しでした。その後、夫ヨセフが天に召され、マリアは、少なくとも男の子4人と女の子2人のこどもたちを育てます。

 イエスさまが30歳になられたころ、家を離れ、お弟子さんを伴って伝道を始めますと、マリアは、イエスさまの良くない噂を耳にし、案じて親戚の者とイエスさまを尋ねます。イエスさまは、1度郷里のナザレに戻りますが、受け入れられないことから再び郷里へ戻ることはありませんでした。そのあと、マリアは郷里を離れ、イエスさまに奉仕する婦人たちの仲間に加わります。2、3年後、マリアは、イエスさまの十字架を最後まで見届けるのです。十字架上のイエスさまが最期に告げた御言葉は、マリアを愛する弟子に委ねたことです。

 十字架の死から3日目の朝早く、葬られた墓に詣でたマリアは、復活のイエスさまに出会い、復活の証人の1人となっていきます。

 以上が、4つの福音書から見た母マリアの姿です。

 ルカによる福音書の続編と呼ばれる使徒言行録から、マリアは家族と一緒にお弟子さんをはじめ120人ほどの仲間と一緒に熱心に祈りを献げていました。そのとき、聖霊の降臨を受け、世界最初の教会設立日に立ち会い、伝道する教会の一員となったのです。

【勝利の信仰】

 マリアは母として、郷里ナザレで、イエスさまと30年間一緒に生活しました。ごく普通の穏やかな日常生活でした。

 マリアは、愛する長男イエスさまが大工としての家業を捨て、伝道者として活躍する姿を見ます。間もなく、マリアはこどもたちと一緒にイエスさまの伝道に寄り添う母として歩むのです。

 ですが、2、3年後、過越祭が始まる直前、我が子の姿を十字架上に見届けなければなりませんでした。3日後には、神の御子イエス・キリストの復活の証人となり、40日後には、昇天をその目で見届け、それから10日後には、聖霊降臨による教会誕生に居合わせました。

 その結果、マリアは、御使い、異邦の人々、預言者たちの証言を思い巡らして、ついに、イエスさまこそ神の御子キリストであり、世を救うただ御独りの御方であることを確信しました。信仰による救いの人生、天国で再会することを待ち望む希望をもって歩み通したのです。それは、御国を待ち望む〝勝利の信仰〟と呼んでよいかと思います。

【愛の掟】

 母マリアのことを思いながら、「主の祈り」のことを考えますと、我が子が教える「主の祈り」を唱えることには、確かな喜びが心に満ち溢れていたように思えてくるのです。我が子イエスを神の御子キリストと信じて祈る「主の祈り」には、33年を寄り添うように歩み通した我が子の息遣いを思い起こすことができたからです。

 では、お弟子さんにとって「主の祈り」には、どのような思いが込められているのでしょうか。

 実は、「主の祈り」には、その背景として旧約聖書があったのです。それは、「モーセの十戒」です。「モーセの十戒」は、最初の4つの戒めを通して、信仰生活の正しい在り方の基は、ただ御独りの主のみを神と信じて生活することにある、と教えます。それに続いて、残り6つの戒めを通して、人間関係の正しい在り方を教えるのです。十戒は、誰もが従順に聞き従って生活すべき律法の源なのです。

 イエスさまは、「モーセの十戒」を大切にされ、それを分かりやすくするために、「愛の掟」として2つにまとめられたのです。

 第1は「神さまを愛すること」。

 第2は「隣人を愛すること」。

 お弟子さんにとって「モーセの十戒」は、モーセ以来、千3百年近くにわたって、先祖から教え守られ、継承されて来た「戒め」でした。それを2つにまとめて教えてくださったのですから、これ以上、分かりやすく、過ちのない人生の規範となる教えはありません。

では、お弟子さんの心に深く残った「愛の掟」を毎日の生活の中でどのように実現していけばよいのでしょうか。「愛の掟」を実現するために教えられたのが、「主の祈り」なのです。

【主の祈り】

 そのため、主の祈りは、モーセの十戒、愛の掟と同じ組み立て方をしていまして、その順番が何よりも大切であることを教えるのです。最初に神さまのこと、次にわたしたちのことを教えているのです。

 「主の祈り」について、印象深いのは、神学校での授業の時のことです。教授から〝次の講義までギリシア語で暗記するように〟と課題が与えられ1週間後の講義に備えました。

 〝パテル・ヘモーン・ホ・エン・トイース・ウラノイース〟

 意味は、「天におられるわたしたちの父よ」です。

 最初に「父よ」との呼びかけで始まっていることが、暗記している時に実感できました。イエスさまは、祈りの最初は、常に「父よ」と呼び掛けられます。イエスさまが日常使っておられた言葉はアラム語でしたので、アラム語では「アッバ・父よ」なのですが、ギリシア語では「パテル」です。暗記するために繰り返しているうちに、「父よ」と天に向かって呼び掛けられるイエスさまの御心に、少し近づいたような気持ちになりました。次の講義では、無事に「主の祈り」をギリシア語で祈ることができましたが、今は昔のことで、最初の1行だけ記憶にあるだけです。

 それでも、「父よ」との呼び掛けによって、イエスさまがお弟子さんに天の神さまを明確にされたことは、深く心に残りました。 

 ただ御独りの主を神と信じる信仰は、アブラハムに始まりモーセへと受け継がれました。アブラハムは、数限りない神々の中で心を通わせ、御言葉に聞き従った神さまはただ御独りの「主」だけでした。

 モーセは、ただ御独りの主なる神さまの御心に生きる生活の中心に「十戒」を据えたのです。

 イエスさまは、それを「愛の掟」として2つにまとめ、信仰生活の規範としました。今それが、「主の祈り」として、7つの祈願により組み立てられているのです。

【主の祈りの真実】

 最初の4つの祈りが「天の父」に向けられる祈願になっています。第1は「父よ」との呼び掛け、第2は「御名の賛美」、第3は「御国の待望」、第4は「御心の実現」です。

 次に、わたしたちにとって最も大切な3つの祈願になっています。

第1は「今日の糧」、第2は「負い目(罪)の赦し」、第3は「誘惑からの救い」です。

 「主の祈り」は、天におられる神さまを「父」と呼んで心を通わせ、心と思いと力を1つに合わせて祈願するただ御独りの主に、常に向き合い続けることが何よりも大切です。1人で祈る時も、わたしたち皆で祈る時も、その心は変わりません。祈りが〝アーメン〟つまり、祈りが〝真実〟であることを告白するのです。

 このように、焦点をただ御独りの「父」に向けることによって、わたしの求めも、わたしたち皆の求めも、互いに愛し合うことによって、分かち合うことへと心は開かれるのです。

 1人で生き、生活することの危うさを、イエスさまはよくご存じでした。毎日必要な主食となる食糧が欠けても、愛があれば助け合うことができます。罪の赦しも、自らの罪に気づきさえすれば、互いに赦し合うことができます。時には、一方的な赦しとなりますが、それが関係を築くためには大切なことです。誘惑や悪い者から救われるのは、信仰を同じくする仲間に祈り支えられていることに気づかされ、愛に触れて悔い改め、主へと立ち帰ることができるからです。

 人が人に関わって生きること、共に生活することは、いつも困難が伴います。それでも、「天の父よ」と呼び掛け、イエスさまの執り成しを受けながら、互いに愛し合えることへと導かれるのは、「主の祈り」の真実に寄り頼んでいるからです。これからも、互いに愛し合い、助け合って、教会を形作ってまいりましょう。


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