説教『天が開かれて』牧師 若月健悟

最終更新: 5月17日

2021年5月16日㈰復活節第7主日礼拝説教要旨  

《聖書》ルカによる福音書24章44~53節

【はじめに】

 ルカによる福音書24章41・42節に、復活のイエスさまと対面したお弟子さんたちの様子が物語られています。

 「彼らが喜びのあまりまだ信じられず、不思議がっているので、イエスは『ここに何か食

  べ物があるか』と言われた。そこで、焼いた魚を一切れ差し出すと、イエスはそれを取

  って、彼らの前で食べられた。」

 イエスさまが復活されてから40日目のことを物語っています。

 お弟子さんたちは、十字架のイエスさまが復活されたことを受け入れようと一所懸命なのです。ですが、どのように受け止め、応答してよいのか分からないのです。その時の心境を見事に物語っています。

 「喜びのあまりまだ信じられず、不思議がってい」た。

 わたしたちは、思いも寄らない意外なことに出会いますと、無意識に笑ってしまうことがあります。相手は真剣に話しているのに、笑いが出てしまうのです。場合によっては、その笑いが相手を不愉快にしてしまうことも起こります。至らなさをお詫びするほかありません。

 お弟子さんは、復活のイエスさまが今目の前におられる現実を見て、喜びに溢れていたことは確かです。ですが、その喜びとは裏腹に、初めての体験ですから、どのように受け入れ、信じて良いのか分からずにいるのです。

 それでイエスさまは、お弟子さんに食べ物を求めるのです。すると、焼き魚が出されます。イエスさまはそれを食べるのです。食べることが生きていることの証しであるからです。

【昇天】

 この日、イエスさまはお弟子さんと地上での別れの時を迎えます。天の御国へと昇る日が来たのです。昇天は、イエスさまが天の父から託された地上での全ての働きを終えて、天に昇られることです。ですから、イエスさまの昇天は、天の父との約束として実現されるのです。

 その約束は、イエスさま昇天後、10日目に起こった、ペンテコステとして実現されるのです。ペンテコステはギリシア語で「50」という意味ですが、旧約聖書ではペンテコステを過越祭から50日目という意味で「五旬祭」とか「七週祭」と呼んでいます(申命記16章9~12節)。さらに「夏の収穫感謝祭」としてお祝いする日が加えられ、3度目に、カナンの地に移住した「土地取得の記念日」、最後に礼拝と生活の規範となる「律法授与の記念日」が加えられました。こうして、ペンテコステは、多様な意味が与えられて、大切な祝祭日となっていきました。イエスさまの時代には、過越祭からペンテコステまで祭りが続き、エルサレムは大変な賑わいを見せていたのです。

 イエスさまは、このようなお祝いムードが最高潮に達する50日目のペンテコステに、お弟子さんたちには思いも寄らないことが起こることを約束されたのです。その約束は、「父の約束」(48節)として、天の父が、イエスさま昇天後10日目に聖霊を派遣され、お弟子さんたちの心を満たし、思いも寄らない力強い伝道の時代を迎えることとして実現されるのです。

 「父の約束」は、「律法と預言者の書と詩編」、つまり旧約聖書「に書いてある事柄」(44節)として、既に証しされていたのです。天の父がアブラハムから始められた救いの御計画を、御子イエス・キリストの十字架と復活と昇天を通して、それから10日後に実現してくださるのです。それは聖霊が派遣されることにより始まるのです。神の御子イエスさまの十字架と復活によって証しされた、天の父の愛が罪人の救いとしてお弟子さんたちの心をとらえ、その救いの喜びを証しするためにこの世に出ていくのです。ペンテコステ、聖霊降臨は、その証しなのです。

 その使命を担ったお弟子さんたちの信仰の源は、天の父と御子から派遣される聖霊の御力にあります。お弟子さんたちの小さな群れは、聖霊を受けて教会の形をとり、教会は聖霊の御力を受けてイエスさまの十字架と復活を証しする群れとして立ち続けるのです。それは、今日まで受け継がれ、御国実現に向かって進んでいるのです。

【天が開かれて】

 では、天においてはどうなのでしょうか。

イエスさまが天に昇られることにより、天は開かれました。それは、イエスさまが神の御子として父の右におられるためです。天に召された全ての信仰の先達たち、つまり聖徒とともに、栄光に輝いておられる御姿を思い浮かべることができます。

 ですが、天に昇られたイエスさまは、聖霊をこの地上に送れば、この地上とは全く関わりがなくなるのでしょうか。教会が建てられれば、それで御子の使命は終わるのでしょうか。そうではないはずです。それは、十字架上のイエスさまの御言葉から知ることができるのです。ルカによる福音書23章32節の〝十字架上の御言葉〟です。

2人の犯罪人とともに十字架の上で最期を迎えられたとき、イエスさまは、天に向かって叫ばれました。

 「父よ、彼らをお赦しください。自分で何をしているのか知らないのです。」

 この御言葉は、罪深いわたしたちのために「赦し」を執り成してくださる愛の御心です。だからこそ、今も天において父に執り成しておられる御子イエスさまの現実が見えて来るのです。

 イエスさまが昇天されたのは、わたしたちのために、たえず執り成し、厳しい罪の裁きの現実からわたしたちを解き放つためなのです。

この執り成しは、天が開かれたことにより、今も、見ようとすれば、その御姿を仰ぎ見ることができるのです。信仰による心の目が開かれているからです(45節)。わたしたちは、愛されていることも、感謝すべきことも、すぐに忘れてしまいます。ですから、イエスさまの執り成しを受けていないと、天は閉ざされてしまったかのように思い込んで、希望を失ってしまうのです。

 イエスさまの昇天は、天が開かれ、天の父とわたしたち教会が御子イエスさまの執り成しによって1つに結び合っている証しなのです。聖霊は、わたしたちの心を天に父に向けさせ、御子イエスさまの執り成しを思い起こさせてくださるのです。教会はその見える証しです。

【祝福】

 イエスさまとお弟子さんたちの別れの時が来ました。イエスさまはエルサレムからベタニア村へと向かわれます。ベタニアは、イエスさまが、もっとも心安らぐ村として、伝道の途中で何度か訪れた村です。

エルサレムから東に向かいますと、オリーブ山があります。その山の南東の麓にベタニアがあります。ベタニアは、イエスさまの葬りの備えをなした、マルタとマリア姉妹、イエスさまによって死の床から命を与えられた、兄弟ラザロが住む村として知られています。

イエスさまは、十字架の死に至る最後の1週間を迎えるにあたりまして、2人のお弟子さんをベタニアへ送り、1頭の子ろばを求めさせました(ルカ19章28~30節)。ゼカリヤ書9章9節の預言を実現するため、子ろばに乗ってエルサレム入城を果たすためです。それにイエスさま一行は、十字架の日までエルサレムには宿泊されず、夜はベタニアで過ごされました(ルカ21章37節)。ベタニアはイエスさまの心の安らぎの地であったことが分かります。

 こうしてイエスさまは、エルサレムからベタニアに到着されますと、いよいよ別れの時を迎えられます。イエスさまは、いつものように手を上げてお弟子さんたちを祝福されたのです。祝福の御言葉は明らかにされていませんが、3年余り一緒に歩んだお弟子さんたちを祝福された御言葉は〝シャローム〟です。

〝シャローム〟は、戦いの武器のない〝平和〟とか〝平安〟を意味します。挨拶の言葉として“ご機嫌よう〟という意味でも用います。戦いの武器のないシャロームが実現されるのは、父と子と聖霊の愛が人の心に満たされる時です。それでイエスさまは、「あなたの敵を愛しなさい」という愛の掟によって真のシャロームを実現されるのです。イエスさまが真のシャローム実現のために「愛の掟」である十字架の道を歩み通されたように、お弟子さんたちも聖霊の助けを受けながら、「愛の掟」にならってシャローム実現のためにこの世に遣わされるのです。イエスさまの祝福は〝派遣の言葉〟でもあるのです。

わたしたちの礼拝が「祝祷」ではなく、「祝福」をもって終わるのは、それを意味しています。祝福されてこそ、世に出ていき、イエスさまの十字架と復活を証しすることがかなうからです。

 お弟子さんたちは、分かったのです。たとえ今、イエスさまが天に昇られても、イエスさまが天の父に執り成しておられる限り、天は開かれ、聖霊がお弟子さんに派遣されて、内なる力として働いておられるのです。それは、今もそしてこれからも変わることのない真実です。

 開かれた天を見上げて、信仰と証しの道を歩み続けましょう。 

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