説教『御言葉の真実』牧師 若月健悟

2021年4月18日(日)復活節第3主日礼拝説教要旨

《聖書》列王記上17章17~24節

【はじめに】

 預言者エリヤは、ティシュベの出身で、ヨルダン川の東にありますギレアドの山あいで若い日を過ごしました。詳しいことは分かっていませんが、とても厳格な性格であったようです。

 時代は紀元前9世紀、イスラエル王国は南北2に分かれ、北王国はアハブ王が支配していました。エリヤは北王国の預言者として活躍しました。長引いた内乱は収まりましたが、北方には、シリアが勢力を伸ばし、両国の戦いが繰り返されました。さらに北方には、アッシリアが勢力を伸ばし、脅威となり始めたんのです。

 アハブ王は、北方の勢力に対抗するため南ユダ王国と同盟を結びました。それだけでは安心できませんでしたので、北王国と隣接し、海岸沿いにあるフェキニアという大国と同盟を結んで、勢力を拡大しました。そのために、アハブ王はフェニキアの王の娘イゼベルと結婚しまして、国を守ろうとしたのです。

 政策は功を奏しましたが、問題は、イゼベルがアハブにまさる野心に富んだ女性であったことです。フェニキアの宗教をそのまま、北王国に導入し、アブラハム以来のイスラエルの信仰を排除しようとしたのです。アハブ王は、女王イゼベルの言いなりでした。

 そこで立ち上がったのが、預言者エリヤだったのです。主なる神さまのみを信じる父祖伝来の信仰と宗教を捨てて、外国の宗教を取り入れることは、国を失うばかりでなく、神の民としての心の拠り所である信仰を根こそぎ失うことを意味したからです。

 主なる神さまは、エリヤを用いて、北王国イスラエルを建て直し、悔い改めて主なる神さまへ立ち帰ることを望まれ、エリヤをアハブ王のもとへ送るのです。

 預言者エリヤは、主なる神さまの命じられるままに、〝数年の間干ばつが続き、王国は危機に瀕する〟と預言したのです。この預言が何を意味するのか、エリヤは良く知っていました。それは、アハブの怒りがエリヤの命を狙い、王国にとどまることができないことでした。

【逃亡生活の中の奇跡】

 主なる神さまは、エリヤをヨルダン川の東にあるケトリの川のほとりへと身を隠させ、さらに、同盟国フェニキアの町シドンのサレプタへと導かれたのです。預言者エリヤの外国逃亡生活の始まりです。

 この逃亡生活の中で、エリヤは2つの奇跡を行うのです。

 1つは、息子と2人暮らしのやもめの家に滞在し、パンの奇跡を行ったことです。

 もう1つは、突然息子が重い病気にかかり、あっという間に息を引き取ってしまいますが、その息子を生き返らせた奇跡です。

 最初のパンの奇跡は、やまめと息子に残された最後の一握りの小麦粉から3人が食べても尽きることのないパンが与えられたことです。 

 生き返った息子の奇跡は、命という宝を失ったやもめに新たな命として返されたことです。

 この2つの奇跡は、何を意味しているのでしょうか。

 最初のパンの奇跡では、預言者エリヤの言葉を信じて、やもめが最後の一握りの小麦粉をエリヤのために差し出したことです。人の言葉を主なる神さまの御言葉と等しいものと信じた奇跡です。

 次の、息子の命が生き返った奇跡を通して、やもめがエリヤを真実の預言者として受け入れたことです。これは人の言葉を主なる神さまの御言葉の真実として受け入れた奇跡です。やもめは告白します。

 「今わたしは分かりました。あなたはまことの神の人です。あなたの口にある主の言葉は

  真実です。」(24節)

 2つの奇跡は、預言者の言葉に聞き従う、外国のやもめの従順な信仰の証しです。それと共に、この奇跡を通して、預言者エリヤ自身が、主なる神さまの御言葉の真実に生きる覚悟ができたことです。

 逃亡生活の中で、アハブ王に告げた主なる神さまの御言葉は、預言者エリヤにとって、あまりにも厳しく過酷なものとなりました。逃亡生活は、エリヤにとって、国を離れ、外国で生き延びることの厳しさを味わうことになりました。ですが、2つの奇跡を通して、やもめの信仰が告白され、その告白を通して、エリヤは預言者として主なる神さまの御言葉の真実にいつも立ち帰り、御言葉に立ち続けるのです。御言葉に生き、それを証しすることに使命を自覚したのです。

【御言葉の真実】

 預言者エリヤの言葉が真実であるのは、その言葉が主なる神さまの御心を証しする言葉であるからです。真実であることは、生きて働く神さまの御業であることを意味します。それは、イエスさまによって証しされることになったのです。

 ルカによる福音書を読みますと、4章25節に、イエスさまが預言者エリヤの干ばつによる大飢饉の預言が用いられています。さらにその次の26節では、サレプタのやもめのことが引き合いに出されています。郷里ナザレの人々がイエスさまに求めたものは、耳ざわりの良い言葉であって、悔い改めの言葉ではありませんでした。人の心をアッと驚かせるような奇跡を目の前で実演してもらえることを期待したのです。主なる神さまの御言葉の真実を心から求める人は、誰もいなかったのです。御言葉の真実に照らして、自らを省みて悔い改め、主なる神さまの御心に立ち帰ろうとする信仰は見られませんでした。

 このことは、さらに、ルカによる福音書7章11~17節において「やもめの息子を生き返らせる」という奇跡物語において証しされることになったのです。場所は、ガリラヤ地方南の端にありますナインという町で起こった奇跡です。イエスさまの郷里ナザレからは遠く離れた町でした。

 預言者エリヤの奇跡が、イエスさまにおいて再現された時、ナインの町の人々の心が、8百年以上も前に起こった、シドンのサレプタのやもめの心を動かした信仰を再現させたのです。サレプタのやもめは、預言者エリヤを「神の人」と認め、御言葉の真実に触れて、信仰の告白に至りました。ナインの町の人々は、やもめの息子が生き返った現実を目の当たりにしまして、イエスさまを通して働かれた神さまの御業をほめたたえたのです。

 「大預言者が我々の間に現れた」と驚嘆し、「神はその民を心にかけてくださった」と言って、町の人々は口をそろえて神さまを賛美したのです(ルカ福音書7章16節)。

 イエスさまの噂はたちまちガリラヤからユダヤ地方へ、さらに周辺諸国へと広がっていきました。郷里ナザレでは受け入れられたかったイエスさまでしたが、その噂は外国まで届いたのです。

【真実の証し】

 御言葉の真実は、必ず実を結びます。わたしたちの信仰を確かなものへと導く、神さまの御力であるからです。

 ですが、その真実に心の目が開かれるまでには、忍耐が求められるのです。

 四国の今治教会で副牧師として過ごした時のことです。5歳のお孫さんのために日夜祈り求めるご婦人がおられました。白血病で外に出ることが出ないお孫さんのために、礼拝堂で祈りながら、イエスさまの助けを求め続けられたのです。ですが、その祈りは聞き届けられませんでした。神の人エリヤの奇跡も大預言者と呼ばれたイエスさまの奇跡も起こらなかったのです。5歳の春に男の子は天に召されました。あまりにも悲しすぎる、早いお別れでした。

 葬儀からしばらくして、だいぶ落ち着きを取り戻した時のことです。ご婦人のお宅を訪問しました。お慰めする言葉もなく、ご婦人を前にした時、ご婦人はこのようにお話ししになったのです。

 「孫は今、天国で神さまの御そば近くで、喜んでいることと思います。5年の人生は、わたしたち家族にとってはあまりにも短いもですが、神さまにとっては、永遠の時です。イエスさまの十字架と復活がそれを証ししています。〝おばあちゃん、今こそ信じる時だよ〟そう孫に教えられたように思います。」

 静かに語られるご婦人の言葉に、信仰の確かさを見せていただきました。尽きることのない、神さまの愛と慰めは、御子イエスさまの十字架と復活を通して証しされました。それは、罪人が罪を赦されて永遠の命に生きるためであったことを告げているのです。ご婦人にとって、お孫さんの存在は、御言葉の真実が必ず実を結んで果実となることの証しでした。なお、悲しみは尽きことがありません。ですが、それにもまさる、御子イエスさまの十字架の死と復活の永遠の命は、御言葉の真実の証しとして、今もわたしたちの信仰の拠り所であることを覚えたいと思います。

 「今わたしは分かりました。あなたはまことに神の人です。あなたの口にある主の言葉は  

  真実です。」

 やもめの信仰を覚え、悔い改めて、主に立ち帰ってまいりましょう。


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