説教『生きる弱さ、信じる強さ』牧師 若月健悟

2021年2月7日(日)降誕節第7主日礼拝説教要旨

《聖書》コリントの信徒への手紙二 12章1~10節

【14年前の体験】

 パウロ先生がコリントの信徒への手紙を書き送った年代は、アジア地方の中心都市エフェソに滞在していた時でした。第3伝道旅行と呼ばれています。最後の伝道旅行となりますが、その時間の多くをエフェソで過ごしたのです。その期間は2年間と考えられています。エフェソ滞在期間に、コリント教会で起こっている問題がパウロ先生に届きまして、それに答えたのが、コリントの信徒への手紙2通です。

 この手紙は55~56年ごろに書き留められたと考えられています。そうしますと、パウロ先生が手紙の中で書き記した、〝14年前の不思議な体験をした人の話し〟というのは、41~42年ごろのことになります。実は、この40年代のパウロ先生の足取りが全くつかめないのです。〝空白の期間〟と呼ばれています。この空白の期間に、〝14年前の不思議な体験をした人の話し〟を書き留めたのです。

 この人というのは、パウロ先生御自身のことなのです。他人事のように書いているのは、それをお話しし、証しすることが伝道の妨げになると思えたからです。この体験は、「楽園」つまり天国の話しですから、本来なら、誰もが聞きたい、知りたいと願う、もっとも関心の高いお話しです。ところが、パウロ先生は、「人が口にするのを許されない」(4節)と、神さまから語ることを禁じられたのです。それは、天国で体験した至福の話しが、いつの間にか話しだけが独り歩きを始めた結果、パウロ先生が人ではなく、神のようにあがめられる誤った信仰を引き起しかねないからです。

 伝道者なら、人の歓心を引くために、誰彼となく、自分の体験をひけらかす誘惑がありました。ですが、パウロ先生は、自ら口を封じたのです。コリント教会のクリスチャンは、何度も天国の話しを聞こうと、強く願っていたのかもしれません。それをはねのけたのは、コリント教会のクリスチャンに信仰の真実を伝えるためであったのです。

【弱さの秘密】

 では、天国の話しではなく、何を伝えようとしているのでしょうか。

 パウロ先生は「自分自身については、弱さ以外に誇るつもりはありません」(5節)と断言します。これは言葉の綾ですが、「自分の弱さ」は誇れるものなのでしょうか。むしろ、自分の弱さはできるだけ隠したいものです。強がって生きるのが常です。ですから、弱さを誇るというのは、弱さを通して見えてくるその背後にある真実を証しするためなのです。パウロ先生は、自分がこれまで身に負ってきた「弱さ」、これからも生きている限り身に負って生きていかなければならない「弱さ」を通して、もっと豊かで真実な世界を証しするのです。

 パウロ先生は、「自分の弱さ」の源を「一つのとげ」(7節)と呼びます。そのとげの正体は、パウロ先生の心も体も痛めつけるための、神さまの手立てであることです。「サタンから送られた使い」(7節)とも呼んでいます。この「一つのとげ」を取り除き、サタンの使いを離れ去らせてください、と何度も祈り続けたのです。祈り願いでたのは、神の御子である主イエスさまです。イエスさまだけが父である神さまに執り成してくださるただ御独りの御方であるからです。

 かつて、パウロ先生が若かった時、十字架と復活のイエスさまに出会い、劇的にクリスチャンへと回心しました。それ以来、イエスさまは、パウロ先生の救い主であり、神さまへ執り成してくださるただ御独りの方となったのです。それだけに、イエスさまに祈り願わずにはおられなかったのです。

 〝イエスさま。何とかこのとげを体から抜き取ってください。サタンの使いを心の中から  

  離れ去らせてください。〟

 心と体の痛みを取り除いてください、と真剣に祈り願い続けるパウロ先生でした。身に帯びた「一つのとげ」さえなくなれば、心も体も楽になって、もっと力強く、広い世界へ伝道することができると、本気で考え求めたのです。元気でさえあれば、イエスさまの十字架と復活の救いの喜びをもっと多くの人に語り伝えることができるのです。

 ですが、イエスさまは、告げられるのです。

 「わたしの恵みはあなたに十分である。力は弱さの中でこそ十分に発揮されるのだ。」    

                                    (9節)

 このように告げられて、パウロ先生は、もう何も言えなくなってしまいました。救い主イエスさまの御言葉だからです。この御言葉を耳にし、心に聞き取ってしまった限りは、もう自分のことで祈り願うことができなくなってしまったのです。

 イエスさまの十字架と復活によって実現された、罪の赦しを知った時から、それにまさる罪からの救いの手立ては、他には何もないからです。どのような時にも救いを信じられる、パウロ先生の信仰にこそ、力の源があったのです。その力の源こそ、パウロ先生が味わい、確信した〝弱さの秘密〟だったのです。人の弱さにこそ、救い主イエスさまの真実の力が発揮され、証しされるのです。

【1人の姉妹との出会い】

 ろうばいの花が咲く、今の季節を迎えますと、1人の姉妹のことを懐かしく思い起こします。

 集合住宅の1階に、障がいを持つ娘さんと暮らしておられました。若いころから病弱で、お連れ合いも早くに天に召されましたので、娘さんを抱えてご苦労を重ねて来られました。わたしがお会いしたのは、病床に伏す姉妹でした。70歳も後半を迎えていました。病床から見える外の景色は、ろうばいの花の柔らかな色合いでした。真っ青な空を背景に、薄黄色の花が深い慰めを与えているのです。お尋ねした時には、声も小さく、聞き取るのが難しいこともありましたが、ご自分の今の状況を素直に受け入れておられる信仰の強さが垣間見られました。体は弱っていましたが、心は強く、イエスさまを真っ直ぐ見つめておられる、その姿に心を打たれました。

 好きな聖書の御言葉は、パウロ先生の信仰の言葉です。

 「わたしの恵みはあなたに十分である。」

 ご自分のこと、娘さんのことを考えれば考えるほど、現実は思い煩うことばかりです。そのように思えたのです。体は弱ります。それと同時に、心も萎(な)えていきます。それでも、姉妹の心は信仰の力に満たされているのです。十字架の主イエスさまが、「わたしの恵みはあなたに十分である」と告げられたのですから、その御言葉に依り頼むほかはない、と信じ切っておられるのです。その信仰のお姿に、イエスさまが今ここに一緒にいてくださる、とわたしも素直に信じられたのです。

 「ろうばいの花が好きです。寒風の中で、身を守る葉っぱもないのに、一生懸命咲かせて

  いる、その健気(けなげ)さが慰めです。」

 姉妹の言葉には、優しさがあり、力がありました。イエスさまの十字架と復活をろうばいの花に重ねて見ているようでした。それから、間もなくして姉妹は、天に召されました。姉妹を天に送り届けたあと、間もなく娘さんも教会に通われるようになり、信仰を受け継がれたのです。

【生きる弱さ、信じる強さ】

 パウロ先生は誰よりも強い人と思っていましたが、実は、誰よりも自分の弱さを知っていた伝道者であったのです。その弱さは、伝道者として、大切な弱さです。その弱さを通して、主イエスさま御自身が働いてくださるからです。パウロ先生の弱さを通してイエスさま御自身の御業が実現し、罪人の救いを全ての人に実現するのです。

 生きる弱さを痛感することがあります。若い時に当たり前のようになしえたことが、気が付けば、ミスばかりが目立つようになります。歌の文句に〝私バカよね おバカさんよね〟という歌詞があります。うまいこというなと感心します。〝ばかだなあ〟と自らを振り返ることがしばしばです。ましてや、人前で失態・失言をしてしまいますと、気持ちが折れそうになってしまいます。そうでない気丈夫な方もおらえますが、多くの方は、心くじけて、ついうなだれてしまうのではないかと思います。わたしもその1人です。

 それでも、イエスさまの十字架と復活を証しし、伝えるためであると思い返す時、神さまは必ず用いてくださる、と思えてくるのが不思議です。大切なことは、自分の弱さを嘆くことではなく、その弱さの向こうにある、神の御子・救い主イエスさまの救いの現実です。イエスさまの十字架と復活の栄光に生きる喜びへと招かれているのですから、これで十分であると思い返したいと思うのです。

 「わたしは弱さ、侮辱、窮乏、迫害、そして行き詰まりの状態にあっても、キリストのために満足しています。なぜなら、わたしは弱いときにこそ強いからです。」(10節)

 パウロ先生が、いつも心にいただき続けた、神の御子イエスさまの救いの御力に依り頼んで、自らの弱さをかえりみながら信じて歩み続けましょう。


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