説教『二人の預言者』牧師 若月健悟

2020年9月13日(日)聖霊降臨節第16主日礼拝説教要旨

《聖書》エレミヤ書28章1~17節

【はじめに】

 今から2千6百年も前に、神の都と呼ばれたエルサレムの町を巡って、2人の預言者が命がけで激しく論じ合ったことがありました。エレミヤとハナンヤです。

エレミヤとハナンヤは、2人とも南ユダ王国のベニヤミン族の出身で、エルサレムに近い町に住んでいました。ベニヤミン族からは、イスラエル王国初代の王サウル、のちには使徒パウロが出ています。ベニヤミン族は、小さな部族ですが、とても誇り高い部族でした。

 エレミヤはエルサレムの北東4キロにあるアナトトという町の出身、ハナンヤはエルサレムの北西9キロにあるギブオンという町の出身です。2つの町は近く、お互いの情報を得ていたのかもしれません。同じ時代の同じ部族の2人の預言者は、エルサレムの町の救いを巡って、主なる神さまの御心を激しく論じ合ったのです。

【エレミヤの預言】

 ユダの王ゼデキヤが王の地位に就いたのは、紀元前598年のことです。この年、エルサレムはバビロンとの最初の戦いに破れ、バビロンの支配下に置かれました。バビロンの王ネブカドネツァルは、自ら21歳のマタンヤを王として立て、「ゼデキヤ」と改名させ、支配下に置いたのです。まだ緩やかな支配でしたので、エルサレムの町では神殿礼拝が続けられました。それから11年後の第2回目のバビロンとの戦争によってエルサレムは完全に崩壊してしまいます。世にいう「バビロン捕囚」を迎えるのです。バビロン捕囚に至るまでの間、エルサレムの町は、神さまの御心を問う時代を迎えていたのです。

 ゼデキヤが王になってから4年目のことです。エルサレム神殿の前で、激しい論争が繰り広げられました。預言者エレミヤと預言者ハナンヤの論争です。論争の目的は、主なる神さまがエルサレムの町を救ってくださるのかどうかを明らかにすることにありました。

 エレミヤは先に、エレミヤ書27章のことですが、〝エルサレムはバビロンと戦うことなく、完全服従するように〟と訴えていたのです。エレミヤは服従する姿を誰の目にも明らかなように、木で作った軛(くびき)を首にかけ、エルサレムの将来を示したのです。軛は、牛が畑を耕す時に用いる鋤(すき)をローブにつなぐための道具で、牛の首にかけて用いました。エレミヤは、再びバビロンと戦争を起こせば、町も神殿も全てが破壊され、バビロンでの捕囚期間は70年に及ぶと預言したのです。エレミヤは、その預言のために嫌われ者となりました。エレミヤの真意は、そのような事態にならないためにも戦争を避け、バビロンに服従して現状を保つのが主なる神さまの御心であると説いたのです。

 エレミヤの絶望的な預言は、当然、王さまをはじめ町の人々からは強い反感をかったのです。このようなエレミヤへの反感を背景として、人々の思いを代弁したのが、預言者ハナンヤだったのです。

【ハナンヤの預言】

 ハナンヤは、エルサレムの町の回復を告げるのです。

〝2年以内にバビロン王の軛から解放され、エルサレム神殿から奪い去られた全ての祭具が取り戻され、捕囚の民は皆戻ってくることになる。これは主なる神さまがなされることである。〟

 ハナンヤの言葉は、誰もが期待する心地良い預言でした。エルサレム神殿が前のように回復し、皆が希望をもって生きる時代が2年も待たずに訪れるのです。誰もがひきつけられました。

 確かに、ハナンヤの言葉には、根拠があったのです。それは、勢力を弱めていたエジプトが国力を回復し始め、バビロンとの戦いに向けて備えていたことです。ユダの王ゼデキヤもエジプトの力を当てにしていたのです。ですから、エジプトの力を頼みとしてバビロンを倒し、再びエルサレムの町を回復するというのは皆が待ち望むことでした。

 ハナンヤの預言は、主なる神さまの御心というよりも、その時代の期待を〝預言〟と称して語ったに過ぎなかったのです。いつの時代もそうですが、夢も希望もない言葉よりも、今の苦しみさえ抜け出せれば何でも信じたいという時代の空気があります。ハナンヤはその時代の空気を見事に汲み取り、〝主なる神さまの御心である〟と、大胆に告げたのです。

【真実の預言】

 ですが、エレミヤは〝人の力に寄り頼まず、主なる神さまにのみ依り頼め〟とハナンヤに語り掛けるのです。

 「アーメン、どうか主がそのとおりにしてくださるように」(6節)と語り始めます。ですが、エレミヤは、昔の預言者に触れ、〝戦争・災害・疫病という実に厳しい現実が国内に起こる〟と預言したことを諭しました。平和はその時が来て初めて実証され、「まことに主が遣わされた預言者であることが分かる」(15節)と語り終えるのです。

 つまり、ハナンヤの預言が本当かどうか、その時が来れば分かると告げたのです。ですが、エレミヤの言葉に怒ったハナンヤは、エレミヤの首から木の軛を外して打ち砕き、大胆に宣言するのです。 

〝この木の軛のように、2年を待たずしてバビロンの軛は砕かれ、王も民も皆が解放される。〟

 論争はハナンヤの勝利で終わったように思えました。ですが、主なる神さまはエレミヤを再びハナンヤのもとへ遣わすのです。

〝木の軛は打ち砕かれた。だが、バビロン王は鉄の軛を国民にはめることになる。これは主なる神さまの御心である。〟バビロン捕囚は避けがたい現実となると語り終えると、ハナンヤに宣告するのです。

 「お前は今年のうちに死ぬ。主に逆らって語ったからだ」(16節)。

 ハナンヤは、エレミヤが告げた御言葉の通り、その年の7月に死んだのです(17節)。

この結末は、ハナンヤが主なる神さまから遣わされた預言者ではなかったことを証しすると同時に、エレミヤこそ主なる神さまから遣わされた真実の預言者であることを証ししたのです。

【エレミヤの真実】

 エレミヤは主の御言葉をその御言葉の通り語り続けた預言者です。人が主なる神さまを裏切り、離れて行っても、主なる神さまは罪人を見捨てることはないのです。主なる神さまは偽りと不真実を見逃しませんでした。ですが、それは裁いて滅ぼすためではなく、自らの罪に気づいて悔い改め、主に立ち帰るためなのです。本来の信仰に立ち帰り、主なる神さまと共に生きるのです。エレミヤにとって主なる神さまは、弱った人を憐れみ、貧しい人を助け、病める人を癒しくださるただ御独りの御方なのです。エレミヤは預言者として、主なる神さまの変わることのない愛と憐れみの御心に真実を見、その真実に依り頼みながら、託された御言葉を語り続けたのです。

 それだけに、口先だけの偽りの預言者を厳しく裁き、主の御名と御言葉の真実のために語り続けたのです。

 わたしたちは、預言者エレミヤのその先に神の御子イエスさまを見るのです。

【真実、その信仰】

 預言者エレミヤの真実は、主なる神さまの愛と憐れみの御心から発せられる御言葉の真実に依り頼むことにあります。

 今、わたしたちは、その真実を御子イエスさまに見るのです。御子イエスさまは十字架の上にあげられ、その命の代償としてわたしたちの罪を贖い赦してくださり、救い主キリストとして復活されて、その復活の命にあずかって永遠の命に生きる信仰の道を開いてくださったのです。御子イエスさまの十字架と復活を信じる信仰によって、天の御国への招きが約束され、この世の営みを終える時には、天の御国へと召してくださるのです。父なる神さまの愛と憐れみの御心を御子なるイエスさまが実現し、聖霊なる神さまが今もその信仰をわたしたちの心に生き生きと息づかせてくださっているのです。この一貫した罪人の救いの御業にこそ、真実があるのです。この真実をわたしたちは信じて告白するのです。

 預言者エレミヤが告げ、御子イエスさまが実現してくださった罪人の救いの真実に依り頼んで歩み続けてまいりましょう。

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